量子化学・量子技術の基礎知識
新技術を生み出した「量子革命」
2025.02.27第1次量子革命:現代技術の礎を築いた科学的転換
20世紀前半、それまでの古典物理学では説明できなかった現象を解明するために、「量子力学」が誕生しました。シュレーディンガーやハイゼンベルクらの研究によって確立されたこの理論は、アインシュタインの相対性理論と並ぶ現代物理学の重要な基盤となっています。
量子の世界では、電子や光子が「波と粒子の両方の性質をもつ」「複数の状態が同時に存在する」といった直感に反する振る舞いを示します。この特性の発見により、半導体やレーザーなどの技術が発展し、「第1次量子革命」と呼ばれる大きな技術革新がもたらされました。
【第1次量子革命の主な成果】
半導体技術(トランジスタ):1947年に発明され、コンピューターやスマートフォンの基盤に。
レーザー技術:光ファイバー通信、医療機器、CD・DVDの読み取りなどに応用。
電子顕微鏡:微細構造の観察を可能にし、ナノテクノロジーの発展に貢献
こうした技術革新によって、現代の電子機器や通信技術の基盤が築かれ、私たちの生活や産業は大きく変わりました。
第1次量子革命の成果は、現在もあらゆる分野で活用され続けています。
第2次量子革命:新たな産業変革をもたらす技術革新
第1次量子革命を経て、現在「第2次量子革命」が進行中です。第1次革命が量子の基本的な性質を解明し、それを活用した電子機器や通信技術を発展させたのに対し、第2次革命では量子の持つ「超並列性」や「量子もつれ」といった特性を直接利用し、これまでのコンピューターや通信技術を根本から変えることが期待されています。
特に、量子コンピューター、量子通信、量子暗号、量子センサーといった技術が注目されており、これらは従来の技術では解決できなかった問題を革新的な方法で解決する可能性を秘めています。例えば、量子コンピューターは膨大なデータ処理を瞬時に行うことができ、量子暗号は究極の安全性を実現する通信技術として研究が進められています。
【第2次量子革命の展開】
量子コンピューター:超高速な計算能力を持ち、創薬、金融、気象予測、人工知能の分野で活用が期待される。
量子通信・量子暗号:極めて安全な通信技術として、国家安全保障や金融取引に応用される。
量子センサー:医療、材料開発、ナビゲーションなど、従来の測定技術を飛躍的に向上させる。
※上記図は、量子産業の創出・発展に向けた推進方策概要資料より抜粋(令和6年4月9日:量子技術イノベーション会議)
掲載元:内閣府ホームページhttps://www8.cao.go.jp/cstp/ryoshigijutsu/240409_q_measures_o.pdf
現在、米国や中国を中心に量子技術の覇権争いが激化しており、日本も2020年に「量子技術イノベーション戦略」を策定し、国を挙げて研究開発を推進しています。
第2次量子革命の進展は、エレクトロニクスや通信の枠を超え、医療、材料、金融、エネルギー、物流、安全保障など、あらゆる分野に影響を与えると考えられています。量子技術は今後の社会や産業を支える新たな基盤となる可能性を秘めており、その動向が世界中で注目されています。